塚地武雅さん #3 塚地武雅さんインタビュー(鴨田丈一 役)

今回演じている鴨田に、どんな印象をお持ちですか?

 いままでに経験したことのない役ですね。僕がこれまで頂いた役というのは、奥手で女に弱いダメ男兼モテない男ばかりだったんですけど、今回の鴨田という役は、女に興味がないというか、山田優ちゃん演じるエリーを見ても何とも思わない。そっけないどころか、上から目線という初めての役どころなので、演じていて楽しいですし(笑)、新鮮な気持ちでやらせていただいています。ただ、視聴者のみなさんにどこまで納得していただけるのか……。「嘘つけ、塚地がよく山田優ちゃんに上から行けるな」って思われるかもしれないですけどね(笑)。

演じていて難しい点はありますか?

 飄々としているというか、物事に対して本気じゃなくてそっけない、でも三流男性雑誌の契約カメラマンなので、いかがわしいとまではいかないまでも、街で女の子の胸元とかを撮ったりしている分、ちょっとチャラさもあったりする、その辺が難しいです。いままでの役はボケ役というか、周りに突っ込まれるような役が多かったんですけど、今回は優ちゃん演じるエリーに突っ込んでいく役なので、役割も180度違うんですよね。そういう点でもあまり経験がないので、難しいですけど、楽しみながらやっています。

山田優さんとの共演は初めてですか?

 バラエティ番組でご一緒したことはありますが、ドラマでは初めてです。女優さんでもありモデルさんでもあるので、綺麗できらびやかなイメージがあって、クランクインする前はそんなに話もできないだろうなって思っていたんです。ですが、実際にはぜんぜんくだけまくりの人で、ずっとしゃべっているし、鼻歌を歌ってみたり、変な動きをしてみたり、一切の気取りがないんですよ。エリーという役も、優ちゃんのイメージとはまったく違うのかなと思っていましたけど、まんまエリーですね(笑)。素の優ちゃんも超がつくほど明るくて元気ですから、現場の雰囲気もとてもいいですし、僕の健康も心配してくれて、撮影の合間にあまり煙草を吸わないよう、監視してくれています(笑)。

ここまで撮影した中で、特に印象に残っているシーンはありますか?

 2話の、エリーの部屋が雨漏りして僕の部屋に来るシーンですね。僕は「勝手にしろ」という感じで寝ているんですけど、寝がえりをうったら、そこにエリーのお母さん役の渡辺えりさんが寝ていて、「すみません、私もお邪魔しちゃって」みたいなことを、ものすごく近い距離で言われるんです。それを3秒くらい凝視して、もう一度寝がえりをうち直すんですけど、それはたまらなかったですね。例えば、キスシーンとかでのその距離とかだったら、面白い感じにはならないんでしょうけど、そんなに近い距離で、普通のセリフを横になりながら目開いて言うっていう姿にえりさん自身も笑いが止まらなくなっちゃってるし、僕自身も3秒凝視しなきゃいけないのが相当なプレッシャーで…。上から撮っていたので、えりさんが「笑っちゃうから、目線を合わせなくてもいいですか」って監督に提案して、見ている風に見えますからそれで行きましょうってなったんですけど、僕は斜めの方を見ているえりさんを見る訳じゃないですか。そうすると、対面して言われるよりもおかしくて、それは俺が無理ですってことになって、何回も撮り直しました。

原作は読まれましたか?

 原作は読んでないんです。もちろん西原さんの半生や(鴨田のモデルになっている)鴨志田さんのことも知っていますし、お二人のドキュメンタリー番組も見たんですけど、あまりに知り過ぎると、そのイメージに引っ張られてしまうので……。要は、有る程度モチーフにはしていますけど、全然違うコメディものになっているから、これ以上見たらアカンって思ったんですね。でも、鴨志田さんが言っていた、笑うことが大事だというか、戦場カメラマン時代に、辛い状況でも子どもたちが笑っているのを見て……というところは、けっこう肝的な部分になるのかなと思いました。それ以外は、箇条書きの事実ぐらいのことだけに留めておこうと思っています。

今回のドラマは、貧乏で不幸ながけっぷち女・絵里子の痛快サクセスドラマですが、これまでに「いま“がけっぷちに立っている!”と思うような体験はありましたか?

 いっぱいありますね(笑)。まず、浪人しているときが本当に地獄でした。一年を費やして勉強したのに、試験で手ごたえがなくて、早めに受けた大学から不合格の通知が来て……もう一浪したいなんて言えない、そのプレッシャーは辛かったです。ベタですが、ひとりで海に行ってボーっとしてみたり、「これで受からなかったら俺の存在って何なんだろう」って思いましたね。どうにか合格しましたけど、全部落ちていたら、どうなっていたんだろうって思います。
 この世界に入ってからも、エリーじゃないですけど、とにかく貧乏でしたね。ライブに出ても一本300円とか、事務所のライブはお金も出ないので、一ヶ月の収入が千円くらいの月もありました。でも、どうしても風呂が付いているところに住みたいという野望があって、家賃が5万円だったんです。僕、脱サラしてこの世界入っているんですね。ずっとお笑いをやりたかったのに、親の手前就職して、働いていれば忘れていくだろうって思ってたんですけど、休み時間とか空きの時に仕事用の手帳みたいなのに、自然とネタ書いていて、それが1カ月2カ月で1冊2冊になって。「なんでネタつけてるんやろ……、俺やっぱりお笑いやりたいんやな、だったらやろう」と決意して、両親にそのことを話したら、親父はキレて、おかんは泣き崩れて、もう一切援助しないと言われてしまったので、仕事は半年くらいで辞めて、あと半年はフリーターで朝から深夜まで働いて金貯めてから上京したので、その分の貯金が最初の頃はあったんです。でも、気がついたら完全になくなって、お金を借りて……という生活をしていましたので、借金が返せる日は来ないと思っていました。でも、お笑いの仕事しているときはそんなことは全然思わず、借金はあるけど楽しく生きていたというか、いつの日か返してやるぜ!みたいな野望があったので、貧乏でも前向きに頑張るエリーの気持ちもすごくわかります。

最後に、作品のみどころと視聴者のみなさんへのメッセージをお願いします

 「面白かった」で終わるんじゃなくて、パワーを貰えるようなドラマだと思います。ここまで前向きなキャラクターって、誰が見ても応援したくなるでしょうし、この主人公を嫌いになる人はいないというか、エリーの姿を見て自分も奮起できる、彼女がこんなに頑張っているんなら自分も頑張ろうと思えるんじゃないかな。内容の説明をするよりも、とにかくドラマを観てください。エリーを見て、力を貰ってくださいという感じですね。
 あとは、エリーのキャラクターが前向き過ぎて、ある意味バカっぽい感じだったりもしますから、そこに突っ込みを入れるところ、言うても僕、お笑い芸人なので、ええ突っ込みしているはずですから、その辺も見ていただきたいですし、優ちゃん相手に「全然気のない振りして!」みたいに思うかもしれませんけど、こういう役は初めてなので、新鮮な塚地を見ていただきたいです。それと、エリーと鴨田は、実際は結婚したお二人がモデルになっているので、視聴者のみなさんから、そうなって欲しいという希望をHPに書き込んだり、番組宛に送っていただけると、監督や脚本家、プロデューサーも、「観ている人たちがこれだけ言っているんなら、そこまで描こう」ってなるかもしれません。そんな力を貸していただけるとありがたいです(笑)。