大杉 漣さん #6 大杉 漣さんインタビュー(梅本勝男 役)

今回演じている梅本編集長に、どんな印象をお持ちですか?

 三流週刊誌と言われる『週刊秘宝』の編集長ということ以外、私生活はまったく見えないので、僕なりにいろいろ考えてみたんです。もちろん細かく決めなくても梅本さんという人物は成立するとは思うんですけど、密かに僕の中で思っているのは、バツイチで絵里子くらいの娘がひとりいて、いまはひとり暮し。自分で言うのもなんですが、寂しがり屋です(笑)。芸能ゴシップネタやちょっとエログロな感じのネタなんかも満載の三流週刊誌の編集長ですが、その雑誌を作るために、彼は彼なりに一生懸命やっている、三流のプライドといったら変かもしれないけど、それを心の中に見据えて仕事に向かっている。言葉使いは乱暴だったり、ギャンブル好きで競馬ばかりやっていますが、仕事に対しては厳しい人だと思います。

演じる上で、特に気をつけていることなどはありますか?

 乱暴なところは思いっきり乱暴にやりつつ、結果的に優しさが垣間見られればいいなと思っています。例えば、べらんめえ調だったり、言い方が乱暴だったりしても、そこにはちゃんと人に対する愛情がある。部下や絵里子に対しても、「頑張んな」っていう愛情がバックボーンにないと、単なる乱暴な言葉になってしまうので、そこは気をつけているところです。梅本さんはどちらかというと会社内とか世の中で器用に立ち振る舞ってはこなかったと思うんですけど、その分、人間臭さがあって、そこに優しさの裏付けみたいなものがある人なので、そこはすごく大事だなと感じています。
 いつもメガネは自前で用意しているのですが、今回も2本作りました。こだわりポイントは、今回は色と形ですね。透明にすると普通のオジサンメガネなのですが、ちょっとアウトローな感じにするために、目の表情が見える程度のカラーレンズにしました。気に入っています(笑)。

演じていて共感する部分やご自身との共通点はありますか?

 さきほど梅本さんは寂しがり屋だと言いましたが、僕も負けないくらい寂しがり屋です(笑)。しかも僕はさびしがり屋で心配性かな。自分自身や家族のことも含め、いろんなことを日々心配しています。僕の母親が「趣味心配」っていうくらいの心配性なので、そこを受け継いでいるんですね。それと、梅本さんは例えば絵里子に対して「頑張んな」と直接は言わないけれど、頑張って欲しいと思っている。実は僕もちょうど同年代の娘がいるので、直接的には娘にそういう言い方はしないけれど、何か目標にむかっている彼女に、そういう気持ちをいつも投げかけています。編集長とイラストレーター、父と娘という関係性の違いはもちろんありますが、口に出さなくても応援しているというところでの共通項はあるかなと思います。どちらかというと自己表現がそんなに器用ではないですし、無骨かもしれないけど、人への愛情や思いを大事にしているというのが共通している部分でしょうか。

現場の雰囲気はいかがですか?

 山田さんが座長として本当に頑張っていますよね。いろいろなところに心遣いもしなきゃいけない立場で、気疲れもあるでしょうけど、いつも明るくてね。編集部での最初の撮影日から、スタジオ横の前室で、みんなでセリフ合わせをしたりして、雰囲気的にもとてもいいと思います。このドラマがどうやったら面白くなるのかということを、山田さんを中心にみんなが一生懸命考えてやっていると思うし、やっているうちにキャラクラターに対する愛情もどんどん深くなっていますしね。もっともっと多くの人に観ていただきたいし、お節介かもしれないけど、何かの道を極めたり、何かをやろうとしているけれど、どういう風にしたらいいのかわからない若い人たちってたくさんいますよね。こうすればいいというマニュアルみたいなことはないけれど、絵里子の様に、原作者の西原さんの様に自分で自分の人生を切り開いて見つけていく姿に、きっと勇気をもらえるような気がします。勇気を持って頑張るというのは大変なことだと思いますが、でもそういう気持ちを持つことはすごく大事だし、それがドラマを通じて、届いてくれるといいなと思っています。

今回のドラマは、貧乏で不幸ながけっぷち女・絵里子の痛快サクセスドラマですが、これまでに「いま、崖っぷちに立っている!」と思うような体験はありましたか?

 いつも崖っぷちでいたいとは思っています。役者になって36年、そのうち20年は映像中心で、16年は舞台を中心ぐらいにやっていて、青春期はアングラと呼ばれる劇団にいたんですけど、劇団時代はとてもお金なんか稼げなくて、アルバイトをやりながら、たまに映画に出て少し稼いでという生活をずっと過ごしていました。北野武さんの映画で個人賞をいただいて、いろんな方面で褒めていただいたのですが、ある方に「下積みが終わってよかったね」って言われたんです。でも僕はそのとき「下積みは終わっていない」って思ったんですよ。ちょっと堅苦しい言い方かもしれませんが、僕らの仕事というのは、下積み続ける仕事だと思うんです。表現というのは終点というか、「これでよし!」という行きつく場所が無い。常にどうすればいいのか考えつつ、歩み続けるのが表現の世界だし、ちょっとした喜びもあれば落ち込むことも凹むことも十分にある世界だから、そういう意味で言うと、気持ちの上ではいつも緊張感の崖っぷちに立っていたい、そのギリギリのところに立ち続けることが、役者として大事なのかなっていつも思っています。確かに僕は寂しがり屋で人も好きだし、知り合いもたくさんいて、この仕事もそういう人たちに支えていただきながらやっていますが、こと表現者として孤独感もちゃんと味わわないといけない世界だと思うし、ひとりでそこに立たなきゃいけないって思っているんです。今回、『崖っぷちのエリー』をやるにあたっても、やっぱり現場は独特の緊張感がありますし、そういう緊張感や自分のモチベーションを、常に崖っぷちに置いておきたいというのはすごくあります。

最後に、この作品のみどころと視聴者のみなさんへのメッセージをお願いします

 絵里子がこれからイラストレーターとして、どうやって世の中に認知され、成功していくのかということだけでなく、人として成長していくところを僕自身も見てみたいですし、そういう表現がこれから出てくるところを期待しています。
 元気というのは、人から与えられることもあるけれど、その一方で、やっぱり自分で奪わなきゃダメだと思っています。よく、「どうすればそんな風になれるんですか?」っていうことを世の中は聞きたがるけれど、本当は教えるものでも教えられるものでもないんですよね。このドラマで元気を、勇気を受け取って欲しいって思うと同時に、じゃあどうすれば元気になれるのか、勇気を持てるのかということも自分自身でも考えてもらえたらいいなと思います。派手に劇的な展開を人生に与えることってそうそうないですから(笑)。でも、小さい変化を求めることは自分の力でもできますしね。
 梅本さんも少しずつ絵里子に対する理解を深めていっている気がします。編集長だから彼女の上司でもあるんだけど、さっきも言ったようにどこか父親目線というか、「頑張んな」って口では言わないかもしれないけど、目に見えない気持ちや雰囲気を梅本さんから感じていただけたら僕はうれしいです。それと、実は毎回オリジナルのTシャツを着ているのは気づいていただけましたか? 「馬魂」とか「牛魂」とかもう7種類くらいあるんです。編集部のみんなにも羨ましがられているんですけど、明確には写していないのかな。クスッと笑っていただける感じなので、少し注目していただければと思います。そしてぜひ、これからも『崖っぷちのエリー』を観続けてくださいね!