渡辺えりさん #7 渡辺えりさんインタビュー(相原光代 役)

今回演じている光代は、渡辺さんから見てどんな女性ですか?

 私はすごく好きです。根性があって、辛いことがあっても愚痴も言わず、ただただ娘のために尽くす、それでいて恩着せがましくなくて、いつも陽気で働くのが大好きという感じが、昔の良き日本の母みたいでいいですよね。

演じる上で特に気をつけていることなどはありますか?

 山形にいる自分の母親の若い頃を思い出しながら演じています。こういう風に頭を撫でてくれたなとか、こういうときにはあんなことしてくれたなとか。昔の母親って、子どもがケガをしたらすぐにパッといけるような反射神経があるでしょ。いまは「こういう風にすると傷つくかな」とか悩みながら子どもと接するような部分があると思うんですね。最近はそういうストレスの多い社会になってきましたけど、昔は考える間もなく「危ない!」ってすぐに手が出る母親が多かったと思うんです。そういう古き良き時代の“昭和の母親”というのをイメージしながら演じるようにしています。

演じていて共感する部分やご自身との共通点はありますか?

 何かあった時に素早く行動するというのは似ています。あとは、なかなかくじけないというところと、徹夜とかで忙しくしていても好きなことのためには大丈夫というところかな。とは言っても、いまいろんな仕事をかけもちでやっていますけど、光代と違ってクタクタです(笑)。ちょっとおせっかいなところも似ていると思います。それと、私はどちらかというとクヨクヨ悩むタイプなのですが、光代は割とカラッとしていますよね。絵里子が仕事している横でもぐうぐう寝るじゃないですか(笑)。私は隣で仕事なんてされたらぜったいに眠れませんから。そこは光代が羨ましいですね。

現場の雰囲気はいかがですか?

 とてもいい現場だと思います。スタッフもみんなにすごく気を使ってくれて、お茶なんて「もう飲めないよ」っていうくらい、しょっちゅう出してくれるんですよ(笑)。若い人たちがすごく一生懸命にやっていていいですね。共演者の方たちも人柄のいい方たちばかりで、みんな陽気で明るくて、お互いに笑わせながら、台本を読みながら一緒に練習したりしています。私が若い頃の、昭和のドラマを作ったときの現場と似ていますね。おかげさまで、とっても居心地が良かったです。

いちばん競演シーンの多い、絵里子役の山田優さんの印象はいかがでしたか?

 すごくいい子で、取り澄ましていないし、がっちりしていて明るい、ハートのある方ですね。やっぱり沖縄出身の方は情が濃いですよね。とってもよくしてもらって、私も楽しくやっています。テレビドラマはリハーサルがあまりないですから、いくら演技しても親しいか親しくないかという雰囲気が画面に出てしまうことがあるんですよ。今回はすごく仲がいい親子の設定なので、優ちゃんで本当によかったです。これがツンとした人だったら、あそこまで濃い感じは出ませんでしたね(笑)。

現代の設定ではありますが、懐かしい雰囲気のドラマですよね

 希望荘のセットに入ると、上京してきて芝居をやっていた頃に住んでいたアパートを思い出して、自分の若い頃と重なるんですよ。撮影中に、あの頃に戻ったような気持ちになっちゃって、現代じゃないような錯覚に陥ることがありましたね。炊事場も共同で、広さもあれくらいでした。もうちょっとシンプルでしたけどね。あの頃はまだ宅配便もない時代で、実家の母からお米や野菜とかいろんなものが郵便局に届いて、それで食いつないだり、「大丈夫か」っていう手紙をもらったりして。光代が食事をいっぱい作って上京するようなところも、うちの母親も同じでしたね。山形に帰省すると、もういいっていうのに本当に歩けないくらいの荷物を持たされて、上野駅に帰ってきたことを思い出しました。

今回のドラマは、貧乏で不幸ながけっぷち女・絵里子の痛快サクセスドラマですが、これまでに「いま、がけっぷちに立っている!」と思うような体験はありましたか?

 若い頃は本当に貧乏でしたね…。1ヶ月13円で暮らしたこともありましたから(笑)。思い出すことと言えば、いつもお腹を減らしていたことです。お金が無いので、銭湯も夏で一週間に一回、冬場は二週間に一回くらいしか行けなくて。だから、銭湯に行くのが本当に楽しみで、行くときには鼻歌歌いながら行っていましたね(笑)。老け役とかをやると白髪のまま帰って来て、そのまま寝て、またそのまま出かけて行くんです。頭に白い粉振ったままで。お風呂に入れないから、1ヶ月そのままだったりして(笑)。貧乏が当たり前でしたから、崖っぷちなんですけど、崖っぷちだという意識が無かったですね。キャベツの千切りだけ毎日食べたり、玉ねぎのスライスに鰹節を振りかけてそればかり食べたりして、いつも腹を空かせたまま寝るという感じでしたね。ただ、アルバイト先の方が親切にしてくださっていたので、よくパンをもらったり、お客さんがご馳走してくれたり、人にもらったものやご馳走になって食いつないでいました。服もアルバイト先で着なくなったものをもらって。18歳から33歳くらいまでは、着るものと食べる物は人にもらって暮らしていましたね。
 アルバイトしないで食べられるようになったのが、30代後半くらいからで、それまでは多いときは一日3つのアルバイトを掛け持ちしていました。朝は事務、昼はトレースのバイト、夜はホステス。全部終わって終電で帰って来て、それから原稿を書いたりするので、翌朝気持ちが悪くなるんですよ。だから、渋谷駅で必ず吐いてから、電車を乗り換えていました。いまでも渋谷駅のある場所に行くと、条件反射で気持ちが悪くなるんです。本当によく体が持ったなと思いますね。
 私もえり子ですが、佐藤江梨子ちゃんも出ていたし、絵里子もキャバクラのアルバイトをやっていて、私もホステスのアルバイトをやっていましたから、似ていますね。本読みのときには、間違えて絵里子のところ読んじゃいました(笑)。

最後に、最終回のみどころと視聴者のみなさんへのメッセージをお願いします

 いちばんのみどころは家族愛ですね。愛情というのはやっぱり育てていくものだと思うんです。最終回では絵里子と鴨田が結婚しますが、ケンカしながらもお互いに切っても切れない仲になっていった二人が結婚して家族を作って、やっと温かい家族を作ったのに、旦那さんは事故で亡くなってしまう。その悲劇の崖っぷちに立たされた絵里子が、どう生きていくのか……そこがみどころだと思います。
 人間というのは必ず死ぬわけで、たった一回しかない人生をどう生きるか、自分が何をしたいのか、何が好きなのかというのをきちんとわかっている人間というのは本当に強いんだなっていうことを見せるような最終回になっているんじゃないでしょうか。いまはストレスの時代で、ちょっとしたことで傷ついたりクヨクヨしたり、生きているのが嫌になることもあると思いますが、もっと未来を考えて、自分が何のために生かされているのか、それをもう一度考えるようなドラマになっていると思います。
 せっかく生まれてきたのだから、辛いことがあっても最後まで生きなくちゃいけないと思うんですね、人間は。あまり神経質にならないで、傷ついたことを深刻に考えずに、もうちょっと客観的に見て、先のことを考える。悩むときはとことん悩んで、またさらに次に繋げられるように、自分の中でバランスを取っていけるように自分を育てていくということが大切だと思います。やっぱり人間ひとりでは生きていけないので、あまり自分を孤独に陥れないようにした方がいい、ひとりでもひとりじゃない。今回は、そんな家族愛が見られると思います。
 このドラマの登場人物たちはみんな一生懸命ですからね。やっぱり一生懸命な方がいいですよね。昭和の一生懸命っていうのは死語になってしまって、あまり考えずにボーっとしている方がカッコイイという時代がずっとあったけれど、いまはそんなことを言っていられる時代じゃないと思うので、みんながもっと一生懸命になった方が、世の中がよくなっていくような気がします。人のために一生懸命になる、そうやって支え合っていけば、もっといい時代がやってくるんじゃないかなと思います。